家族に万一のことがあったとき、公的保障の中心になるのが遺族年金です。ただし、「会社員なら必ず同じ金額」「配偶者なら一生受け取れる」という制度ではありません。

受け取れる年金は、亡くなった方が国民年金・厚生年金のどちらに加入していたか、子どもの有無と年齢、遺族の年齢、保険料の納付状況などで変わります。

結論からいうと、生命保険の死亡保障額を考える前に、まず遺族基礎年金と遺族厚生年金の対象・金額・終了時期を確認することが重要です。この記事では、2026年9月時点の制度と2026年度の年金額を整理します。

遺族年金は「基礎」と「厚生」の2種類

遺族年金には、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金があります。

  • 自営業・フリーランスなど:主に遺族基礎年金が対象
  • 会社員・公務員など:要件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方が対象
  • 子どものいない配偶者:遺族基礎年金は原則対象外。遺族厚生年金は年齢などの条件により対象になる場合がある

まず「亡くなった方の加入制度」と「18歳到達年度末までの子がいるか」を確認すると、全体像を整理しやすくなります。

遺族基礎年金を受け取れる人

遺族基礎年金を受け取れるのは、亡くなった方に生計を維持されていた次の遺族です。

  • 子のある配偶者

ここでいう子は、原則として18歳になった年度の3月31日までにある未婚の子です。障害等級1級・2級の状態にある場合は20歳未満まで対象になります。子のない配偶者は、遺族基礎年金を受け取れません。

「生計を維持されていた」とは、原則として生計を同じくし、前年収入が850万円未満または所得655万5,000円未満であることをいいます。同居だけでなく、別居中でも仕送りや健康保険上の扶養などから認められる場合があります。

2026年度の遺族基礎年金はいくら?

2026年4月分から、昭和31年4月2日以後生まれの配偶者が受け取る遺族基礎年金は、年額847,300円+子の加算額です。

  • 1人目・2人目の子:1人につき年額243,800円
  • 3人目以降の子:1人につき年額81,300円

たとえば、対象となる子が1人いる配偶者なら、年額は1,091,100円、単純に12で割ると月額約90,900円です。子が2人なら年額1,334,900円、月額換算で約111,200円になります。

実際の支給は2カ月分ずつであり、月額換算は家計を考えるための目安です。また、年金額は年度ごとに改定されるため、将来の保障額を固定額で決めつけないようにしましょう。

遺族基礎年金はいつまで受け取れる?

遺族基礎年金は、原則として一番下の子が18歳になった年度の3月31日を迎えるまでです。対象となる障害状態の子は20歳になるまでです。

高校卒業と同じ年度末で終了することが多いため、その後も大学費用や生活費が続く家庭では、公的保障が減る時期を資金計画に入れておく必要があります。

遺族厚生年金を受け取れる人と金額

遺族厚生年金は、厚生年金の加入者や一定の受給資格を満たした方が亡くなった場合に、生計を維持されていた遺族のうち優先順位の高い人へ支給されます。

対象となり得る遺族は、子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です。ただし、夫・父母・祖父母には年齢要件があり、同順位の人全員が自由に選べる制度ではありません。

年金額は、原則として亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。給与そのものの4分の3ではありません。加入期間や過去の標準報酬月額・標準賞与額から計算されるため、正確な金額は年金事務所などで確認する必要があります。

一定の短期要件で亡くなった場合、厚生年金の加入期間が300月未満でも300月として計算する仕組みがあります。単純に勤続年数だけで少ないと判断しないことが大切です。

現在の遺族厚生年金はいつまで?

2026年9月時点の現行制度では、受給期間は遺族の属性によって異なります。

  • 子のない30歳未満の妻:原則5年間
  • 子のない夫:死亡当時55歳以上が対象で、原則60歳から支給
  • 子のある配偶者:遺族基礎年金と合わせて受け取れる場合がある
  • 一定の妻:40歳から65歳まで中高齢寡婦加算の対象になる場合がある

再婚した場合など、年齢以外の理由で受給権がなくなることもあります。「何歳まで」と一つの数字で判断せず、家族構成と受給者の年齢を合わせて確認してください。

2028年4月から遺族厚生年金が変わる

2025年に成立した年金制度改正法により、遺族厚生年金は2028年4月から段階的に見直されます。18歳年度末までの子がいない20代から50代の配偶者を、男女とも原則5年間の有期給付の対象とする方向です。

ただし、すべての受給者が2028年から5年で打ち切られるわけではありません。すでに遺族厚生年金を受給している方、60歳以降に死別する方、18歳年度末までの子がいる方などには現行制度を維持する仕組みがあります。女性の対象年齢も長期間かけて段階的に広げられます。

有期給付には加算が設けられ、障害状態や所得が低いなど配慮が必要な場合は5年後も継続給付の対象になり得ます。これから保障設計をする場合は、現在の制度だけでなく、死別する時期と改正後の経過措置も確認しましょう。

生命保険の必要保障額は遺族年金を確認してから

死亡保障は「教育費と生活費を全部、生命保険で準備する」と考えると過大になりやすく、反対に遺族年金だけで足りると決めつけると不足することがあります。

FP実務での基本的な考え方は、次の順番です。

  1. 遺族年金など今後入るお金を確認する
  2. 配偶者の収入、勤務先の死亡退職金、預貯金を確認する
  3. 住宅ローンの団体信用生命保険と住居費の変化を確認する
  4. 生活費、教育費、葬儀・整理資金など今後出るお金を見積もる
  5. 不足額だけを民間保険で補う

この順序は、自助・共助・公助の考え方にもつながります。生命保険金の受取時の税金は、死亡保険金にかかる税金と非課税枠も確認してください。

遺族年金の請求方法

遺族年金は自動的に振り込まれるものではなく、請求手続きが必要です。遺族基礎年金は原則として住所地の市区町村役場、亡くなった方が第3号被保険者期間中だった場合や遺族厚生年金は年金事務所などが窓口になります。

一般に、年金請求書、戸籍謄本等、住民票、収入確認書類、死亡診断書の写し、受取口座が分かる書類などを用意します。マイナンバーの記入で一部書類を省略できる場合があります。状況により必要書類が変わるため、提出前に窓口へ確認しましょう。

年金を受ける権利があっても、長期間請求しないと時効によって過去分の一部を受け取れなくなる場合があります。対象か分からない段階でも、早めに年金事務所へ相談してください。

よくある質問

共働きでも遺族年金は受け取れますか?

共働きだけを理由に対象外になるわけではありません。生計同一と収入要件、亡くなった方の加入・納付要件、子どもの有無や受給順位などを満たすかで判断されます。

遺族年金に所得税や相続税はかかりますか?

国民年金法や厚生年金保険法に基づく遺族年金は、原則として所得税・相続税ともに課税されません。ただし、民間の生命保険や企業年金、亡くなった受給者の未支給年金は扱いが異なることがあります。

自営業者が亡くなり、子どもがいない場合は?

遺族基礎年金は原則対象外です。ただし、国民年金の第1号被保険者としての納付状況などにより、寡婦年金や死亡一時金の対象になる場合があります。年金事務所または市区町村窓口で確認してください。

正確な見込額はどこで確認できますか?

亡くなった方の加入記録や家族状況で変わるため、年金事務所や街角の年金相談センターで確認します。将来の保障設計では、ねんきん定期便などを参考にしつつ、確定額ではなく一定の幅を持たせて考えましょう。

まとめ

遺族年金は、亡くなった方の加入制度、保険料納付状況、子どもの有無と年齢、遺族の年齢で内容が変わります。2026年度の遺族基礎年金は年額847,300円を基本に子の加算が付き、遺族厚生年金は原則として報酬比例部分の4分の3です。

生命保険を検討する際は、遺族年金、配偶者収入、預貯金、勤務先保障、団体信用生命保険を確認し、必要支出との差額を保障額にします。2028年からの遺族厚生年金改正には経過措置があるため、「全員5年」と単純化せず、自分の家族条件で確認することが大切です。

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