厚生労働省は2026年11月2日、11月を「ねんきん月間」、11月30日を「年金の日」とする取り組みを案内しました。公的年金は老後資金の土台ですが、将来の受給見込額を確認しないままNISAやiDeCoの積立額を決めると、必要額を過大・過小に見積もることがあります。まず年金記録と見込額を確認し、家計の不足分を計算することが出発点です。
何が起きたか
確認済みの事実として、厚生労働省は毎年11月30日を「年金の日」とし、日本年金機構は11月を「ねんきん月間」と位置付けています。2026年度も「ねんきんネット」などを利用して年金記録や年金受給見込額を確認し、高齢期の生活設計を考えるよう呼びかけています。
「ねんきんネット」では、本人の加入記録を確認できるほか、現在と同じ条件で60歳まで加入すると仮定する「かんたん試算」と、働き方や受給開始年齢などを変更する詳細な試算が利用できます。登録不要の「公的年金シミュレーター」でも簡易試算できますが、個人の記録に基づく確認にはねんきんネットが適しています。
背景
老後資金を考えるとき、「老後にいくら必要か」という総額だけが注目されがちです。しかし、必要な準備額は世帯ごとの公的年金、退職金、企業年金、住居費、働く期間によって変わります。公的年金の見込額を把握せず、一律の目標額だけで判断するのは適切ではありません。
年金記録には、転職、独立、扶養、海外居住などによる加入制度の変更が反映されます。記録に認識と異なる点があれば、早めに年金事務所などへ確認することが重要です。受給直前になって不足に気付くより、現役期に確認した方が、働き方や積立額を調整する時間を確保できます。
投資家への影響
公的年金の見込額が分かると、老後資金として株式、投資信託、債券、預金に求める役割を整理しやすくなります。公的年金で基礎生活費の多くを賄える世帯と、不足が大きい世帯では、許容できる運用リスクや必要な積立額が異なります。
退職が近い人は、株式の期待収益だけで不足額を埋めようとすると、相場下落時に取り崩しが重なるリスクがあります。受給開始までの生活費や近く使う資金は預金・個人向け国債など値動きの小さい資産に分け、長期資金と区別することが大切です。
NISA利用者・家計への影響
NISAは運用益が非課税で、必要なときに売却しやすい一方、iDeCoは掛金の所得控除など税制上の利点がある代わりに、原則として60歳まで引き出せません。老後専用資金はiDeCo、教育費や住宅修繕など途中で使う可能性のある資金はNISAや預金というように、目的と時期で使い分ける考え方があります。
家計では、まず「老後の月間支出-公的年金の月額」で不足額の目安を出し、退職金や企業年金を差し引きます。そのうえで、積立期間と無理なく続けられる金額を確認します。住宅ローンや教育費が重い時期に、老後資金のために生活防衛資金を削るのは避けましょう。
FP松尾の視点
FP松尾としての見解は、老後資金の相談では投資商品を選ぶ前に、年金見込額を確認することです。「2,000万円必要」といった一律の数字ではなく、自分の不足額を年単位・月単位で見える化すると、必要以上に不安になったり、無理な利回りを求めたりすることを防げます。
注意点・反対の見方
注意点として、ねんきんネットの試算額は将来の受給額を保証するものではありません。働き方、加入期間、報酬、受給開始年齢、制度改正などで変わります。配偶者や扶養者に関係する加給年金など、試算に反映されない項目もあります。試算は定期的に更新し、直近の家計と照らして使いましょう。
まとめ
11月は「ねんきん月間」、11月30日は「年金の日」です。ねんきんネットで年金記録と受給見込額を確認すると、NISA・iDeCo・預金で準備すべき金額を具体化できます。投資を始める前に公的年金という土台を確認し、近く使う資金と老後の長期資金を分けて考えましょう。
参照元
厚生労働省「『年金の日』・『ねんきん月間』のお知らせ」(2026年11月2日)
