米国株をほぼ一日中売買できる流れが広がっています。米証券取引委員会(SEC)は2026年9月9日、証券取引所MEMXが株式と上場取引型商品を1日23時間・週5日取引できるようにする規則変更を公表しました。日本の個人投資家には便利に見えますが、米国市場全体がすぐ23時間取引に変わるわけではなく、夜間取引特有の注意点もあります。
何が起きたか:MEMXが23時間取引を届け出
確認済みの事実として、MEMXは2026年8月28日に規則変更を届け出、SECは9月9日に通知を発行しました。9月14日には米連邦官報にも掲載されています。対象は米国株とUTP上場取引型商品です。
提案されている米国東部時間の取引区分は次のとおりです。
- オーバーナイト:午後9時〜翌午前4時
- プレマーケット:午前4時〜9時30分
- 通常取引:午前9時30分〜午後4時
- アフターマーケット:午後4時〜8時
午後8時から9時は、保守作業や株式分割・配当などの処理のため取引を停止します。制度の詳細はSECの規則変更通知とMEMXの23×5 FAQで確認できます。
開始時期と利用範囲には条件がある
「規則変更が公表された」ことと「すべての投資家が利用できる」ことは別です。MEMXは関連資料で2026年12月6日の開始意向を示していますが、実際の開始には相場情報を配信するデータプラン側の対応などが必要です。また、日本の証券会社がMEMXの夜間セッションへ注文を取り次ぐかどうかも各社の判断です。
したがって、現時点では米国株取引が全面的に23時間化すると断定できません。口座を持つ証券会社の対応商品、注文方法、手数料、為替取引時間を確認する必要があります。
投資家への影響:ニュースに早く反応できる一方で
市場で想定される見方では、アジア時間に発表された政策・企業ニュースに早く対応でき、海外投資家の利便性が高まります。米国の通常取引開始まで待たずにリスクを調整できる点はメリットです。
一方、参加者が少ない時間帯は売買注文が薄くなりやすく、買値と売値の差(スプレッド)が広がる可能性があります。少ない注文で価格が大きく動き、通常取引が始まると値段が戻ることもあります。利便性が上がっても、適正な価格で約定しやすくなるとは限りません。
MEMXは夜間セッションで静的な値幅制限を使う計画ですが、通常取引時間と同じ価格形成環境ではありません。成行注文より、許容価格を決める指値注文の重要性が高まります。
NISA利用者・投資信託への影響
NISAの非課税保有限度額や年間投資枠が変わるわけではありません。日本の証券会社が対応すれば、NISA成長投資枠の米国株や海外ETFを日本の昼間に売買できる可能性はあります。ただし、対応口座や取扱銘柄は証券会社ごとに異なります。
S&P500や全世界株式に連動する一般的な投資信託は、1日1回算出される基準価額で取引するため、23時間取引の直接の対象ではありません。影響を受けるのは主に個別株とETFです。また、円からドルへの交換時間や為替手数料が別に設定されている場合、株式市場が開いていても思った条件で買えないことがあります。
FP松尾の視点
私の見解では、23時間取引は便利な機能ですが、長期投資の期待収益を高める仕組みではありません。積立中心のNISA利用者は、ニュースのたびに夜間価格を追う必要はなく、資産配分と積立額を保つ方が重要です。個別株やETFを売買する場合も、「今すぐ取引できる」ことと「今取引すべき」ことを分けて考えたいところです。
注意点・反対の見方
取引時間の拡大は、価格発見を促し急なニュースへの対応力を高めるという見方があります。その反面、薄い流動性、表示価格の不安定さ、注文監視の負担が増えるとの懸念もあります。特に損失を取り戻そうと短時間で売買を重ねると、長期の資産形成から離れやすくなります。
まとめ
MEMXの23時間取引案は、米国株を日本から売買する時間の自由度を高める可能性があります。ただし、開始条件、証券会社の対応、夜間の流動性を確認する必要があります。NISA利用者は制度変更と誤解せず、指値、コスト、長期方針を優先して活用を判断しましょう。
