東京証券取引所は2026年9月28日、ETF2銘柄について翌29日の制限値幅の下限を拡大すると発表しました。ETFは株式と同じように市場で売買できますが、市場価格がファンドの資産価値を示す基準価額から大きく離れることがあります。価格が急変している場面で、表示された利回りや下落率だけを見て注文するのは注意が必要です。

何が起きたか

確認済みの事実として、JPXの9月28日の発表では、次の2銘柄がストップ高またはストップ安の値段で取引を終えたため、9月29日の制限値幅が拡大されます。

  • iFreeETF 中国グレーターベイエリア・イノベーション100(コード2629):基準値段4,189円、下限の値幅2,800円
  • NZAM 上場投信 米国国債7-10年(為替ヘッジなし)(コード538A):基準値段7,933円、下限の値幅6,000円

JPXは、2629について中国市場の休場に伴い設定・交換が停止され、市場価格と基準価額が乖離しているとして、運用会社の開示も確認するよう注意を促しています。また、成行注文では思わぬ価格で売買が成立する可能性があるとしています。

背景:ETFの市場価格と基準価額は別物

ETFには、取引所で投資家同士が売買する「市場価格」と、保有資産から計算される1口当たりの「基準価額」があります。通常は指定参加者などによる設定・交換と裁定取引が働き、両者の差は縮小しやすくなります。

しかし、連動先市場の休場、設定・交換の停止、売買の偏り、流動性の低下などが起きると、裁定が働きにくくなり、需要と供給で決まる市場価格だけが基準価額から離れることがあります。JPXの基準価額等に関する情報では、管理会社が日々の基準価額や純資産総額などを提供すると説明しています。

投資家への影響

値幅制限の拡大は、翌営業日に通常より広い範囲で価格が動ける措置です。下限が広がれば、寄り付き時点で前日終値から大きく下落する可能性があります。一方で、必ず下限まで下がるという意味ではなく、売買が成立して通常の値段で取引を終えれば、その翌営業日から通常の制限値幅へ戻ります。

市場で一般的な見方として、ETFの市場価格が基準価額より高い状態はプレミアム、低い状態はディスカウントと呼ばれます。プレミアムで買うと、連動対象が上昇しなくても乖離の縮小だけで損失が出る可能性があります。反対に、大幅なディスカウントに見えても、基準価額の更新が遅れていれば本当に割安とは限りません。

NISA利用者・家計への影響

NISAでもETFの価格変動リスクは課税口座と同じです。NISA口座で発生した損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算できません。そのため、急変時の「安く見える価格」だけで購入すると、損失を税務上利用できない点にも注意が必要です。

売買前には市場価格だけでなく、基準価額、インディカティブNAV、売買高、気配値、買値と売値の差、連動先市場が開いているかを確認します。流動性が低い場面では、成行注文より価格を指定する指値注文の方が、想定外の約定を抑えやすくなります。JPXのETFの売買制度でも、ETFは株式と同様に指値注文と成行注文が可能だと説明しています。

FP松尾の視点

FPとしての見解は、値幅制限が拡大されるほど価格形成が不安定なときは、「今すぐ買う必要があるか」を一度考えることです。長期投資でも購入価格はリターンに影響します。テーマ性や高い分配金より、純資産規模、売買高、乖離率、信託報酬、連動対象の取引時間を優先して確認しましょう。

注意点・反対の見方

市場価格と基準価額の乖離は、必ずしも商品設計の欠陥を意味しません。海外市場の休場や時差によって一時的に生じ、その後に設定・交換や裁定取引が再開すると縮小する場合があります。ただし、乖離がいつ、どの水準まで戻るかは確定していません。

指値注文も約定を保証するものではありません。売却を急ぐ局面では約定しない可能性があり、逆に幅の広い指値では想定より不利な価格で成立することがあります。注文方法だけでなく、保有額を資産全体の一部に抑えることが重要です。

まとめ

東証は2629と538Aについて、9月29日の制限値幅下限を拡大しました。ETFの市場価格は基準価額と一致するとは限らず、連動先市場の休場や設定・交換の停止時には乖離が拡大します。NISA利用者は市場価格、基準価額、流動性、注文方法を確認し、急変時に成行注文を安易に使わないよう注意しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。