米国では、株式を持つ家計の割合がやや低下する一方、保有している家計の株式残高は大きく増えました。株高の恩恵が広がったというより、投資を続けられた家計に資産増加が集中した可能性を示す数字です。

何が起きたか

確認済みの事実として、FRBが2026年10月9日に公表した2025年消費者金融調査では、直接保有と投資信託・退職口座などを通じた間接保有を含む株式市場への参加率が、2022年の58%から2025年は56%へ低下しました。

一方、株式を保有する家計に限ると、保有額の中央値は5万6,900ドルから7万7,400ドルへ36%増加しました。退職制度への参加率は約65%で小幅に上昇し、口座型の退職資産を持つ家計では残高の中央値・平均値ともに増えています。

背景

この調査は、米国家計の所得、純資産、金融資産、住宅、負債などを3年ごとに把握するものです。実質所得の中央値は7%増の8万2,200ドル、実質純資産の中央値は2%増の21万5,900ドルとなりました。平均純資産は7%増の124万ドルで、中央値との差は資産分布の偏りも示しています。

2022年から2025年にかけて株式市場が上昇したことは、既に株式を持っていた家計の残高を押し上げる要因です。ただし参加率の低下は、すべての家計が同じように資産価格上昇の恩恵を受けたわけではないことを示します。

投資家への影響

市場の見方として、家計の株式残高増加は消費を下支えする「資産効果」につながる可能性があります。S&P500など米国株指数にとっては、退職口座や投資信託を通じた長期資金が市場の安定要因になり得ます。

ただし、保有者の残高増加が株価上昇によるものなら、相場が下落したときの逆回転にも注意が必要です。保有額の伸びだけを将来の株高材料と判断するのではなく、所得や負債とのバランスを見る必要があります。

NISA利用者・家計への影響

日本のNISA利用者にとって直接の制度変更ではありませんが、米国株やS&P500投信を長期保有する意味を考える材料になります。相場に参加し続けた家計では資産残高が増えた一方、参加できなかった家計との開きは広がりやすくなります。

一方、所得に対する年間返済額の比率が40%を超える家計は6.5%から8.6%へ増えました。投資残高が増えていても、住宅ローンやカード債務などの返済負担が重ければ、家計の耐久力が高いとは限りません。

FP松尾の視点

FP松尾としては、今回の調査から重要なのは「株を持っていた人が増えた」ではなく、「参加率は下がったのに保有者の残高は増えた」という点です。NISAでも、余裕資金で積立を続ける仕組みを作ることが、相場の上昇局面を取り逃さない現実的な方法だと考えます。

積立額は株価ではなく、手取り、固定費、生活防衛資金、借入金利を基準に決めます。資産価格が上がった後こそ、米国株への偏りや現金不足が起きていないかを確認しましょう。

注意点・反対の見方

調査は3年ごとのスナップショットであり、保有額増加のすべてを投資行動の成果とは言えません。株価、住宅価格、世帯構成、回答者の入れ替わりも影響します。また、米国の退職制度や税制は日本のNISAとは異なるため、数字をそのまま日本の家計へ当てはめることはできません。

まとめ

米国の株式市場参加率は2025年に56%へ低下した一方、保有家計の株式残高中央値は36%増えました。資産形成には市場へ参加し続けることが重要ですが、返済負担の重い家計も増えています。NISA利用者は株高だけを見ず、負債と現金を含めた家計全体で運用を続けられる状態を整えましょう。

よくある質問

株式保有率56%は、日本のNISA利用率を示す数字ですか?

いいえ。FRBが調査した米国家計の数字で、直接保有に加え、投資信託や退職口座を通じた間接保有を含みます。日本のNISA口座数や利用率とは定義が異なります。

保有額中央値が36%増えたなら、今から米国株を増やすべきですか?

この統計だけで判断するべきではありません。増加には株価上昇の影響が含まれ、将来の収益を保証しません。金融庁が案内する長期・積立・分散を基本に、生活防衛資金や負債、資産配分を先に確認してください。

今回の発表でNISA制度や対象商品は変わりますか?

変わりません。2026年10月9日の発表は米国家計の調査結果であり、日本のNISA制度改正ではありません。保有商品の売買を急ぐ材料ではなく、家計と投資を継続できる状態かを点検するための参考情報です。

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一次情報

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。