米労働省労働統計局(BLS)は2026年11月3日、9月の求人・労働異動調査(JOLTS)を公表しました。求人件数は752万3,000件となり、前月の719万件から33万3,000件増加しました。採用は537万5,000件、離職は532万9,000件で大きく変わらない一方、自発的離職は336万5,000件へ増えています。雇用需要の底堅さと労働者の転職意欲を同時に示す内容です。
何が起きたか
確認済みの事実として、9月末時点の求人件数は752万3,000件、求人率は4.5%でした。前月は719万件、4.3%へ改定されています。求人は州・地方政府(教育を除く)で10万4,000件増え、製造業でも増加しました。求人件数は「企業が募集しているポスト」であり、実際に雇用された人数とは異なります。
採用件数は537万5,000件、採用率は3.2%で、前月から大きな変化はありません。自発的離職は前月から32万1,000件増えて336万5,000件、離職率は2.1%でした。解雇・人員削減は157万1,000件でほぼ横ばいです。求人が増えても採用が同じペースで増えていない点が今回の特徴です。
背景
JOLTSは、雇用統計の就業者数や失業率だけでは見えにくい企業の採用意欲と人の動きを確認する統計です。求人増は企業が人手を必要としている可能性を示し、自発的離職の増加は、より良い条件で転職できると考える人が増えた可能性を示します。ただし、求人広告の掲載期間や採用難によって数字が押し上げられることもあります。
9月は製造業や建設業でも求人が増えました。一方、採用は横ばいで、企業が必要な人材を確保できていない可能性もあります。労働需給が引き締まれば賃金の下支えになりますが、人件費を価格へ転嫁する企業が増えれば、サービス物価の鈍化を遅らせる要因になり得ます。
投資家への影響
求人の増加は、米景気が急速に悪化していないことを示す材料です。消費関連、金融、資本財などには業績の下支えとなる場合があります。一方、雇用需要の強さが賃金と物価を押し上げると、FRBが高い政策金利を長く維持するとの見方が強まり、米国債利回りやドル円が動きやすくなります。
金利上昇は銀行の利ざやには追い風となる場合がありますが、将来利益の比重が大きい成長株には評価面の重荷です。ただし、求人統計だけでFRBの判断は決まりません。雇用者数、失業率、賃金、CPIやPCE物価などと合わせて確認する必要があります。
NISA利用者・家計への影響
NISAでS&P500や全世界株式を積み立てる人は、求人増を理由に売買を急ぐ必要はありません。景気の底堅さは企業利益を支える一方、金利上昇は株価評価を抑えるためです。米国株への配分が大きい場合は、株式だけでなく現金や債券を含めた家計全体の比率を確認しましょう。
円安になれば米国株投信の円換算額を押し上げることがありますが、輸入物価を通じて食費や光熱費を増やす場合もあります。また、米国の雇用環境が強くても、日本で暮らす家計の収入が同じように増えるとは限りません。含み益と生活費を別々に見るのではなく、生活防衛資金を確保したうえで積立額を決めることが大切です。
FP松尾の視点
FP松尾としての見解は、求人件数の増加を「米国株が必ず上がる材料」と単純化しないことです。景気の強さと金利の高さは同時に存在します。長期の積立投資では、単月の指標で方針を変えるより、米国株への集中度、積立期間、取り崩しまでの年数を確認する方が実務的です。
注意点・反対の見方
市場の見方には、求人752万件と解雇の低水準を労働市場の底堅さと評価する見方があります。反対に、採用件数が横ばいであるため、求人の増加ほど雇用の実勢は強くないとの見方もあります。JOLTSは改定幅が大きいことがあり、求人の質や賃金条件までは分かりません。
まとめ
9月の米求人件数は752万3,000件へ増え、自発的離職も336万5,000件へ増加しました。一方、採用は537万5,000件で大きく変わっていません。NISA利用者は、景気の底堅さと高金利長期化の両面を確認し、単月の統計で資産配分を大きく変えないことが重要です。
