医療機関で処方される薬のうち、市販薬(OTC医薬品)でも代替しやすい「OTC類似薬」について、患者の自己負担を見直す新制度の具体化が進んでいます。厚生労働省は2026年9月9日の中央社会保険医療協議会(中医協)で、OTC類似薬の保険給付見直しを議題としました。
制度の土台となる法律はすでに成立・公布されています。一方で、誰を別途負担の対象外とするか、医療上必要な長期使用をどう判断するかなど、運用の細部は審議中です。「すべての市販薬が保険から外れる」「2027年3月から全員が一律に4分の1追加」と単純化せず、決定済みの枠組みと検討中の部分を分けて確認しましょう。
9月9日に何が議論された?
厚生労働省は2026年9月9日、中医協総会で「OTC類似薬の保険給付の見直しについて(その2)」を議題としました。これは、2026年5月29日に成立し、6月5日に公布された健康保険法等の改正を実際の医療現場で運用するための検討です。
法律では、OTC医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品を使う療養について、費用の一部を保険給付の対象外とする「一部保険外療養」が創設されました。施行日は公布後1年以内に政令で定めることとされ、厚生労働省資料では2027年3月1日の施行を想定しています。
したがって、新しい負担の仕組みそのものは検討案だけではありません。ただし、対象外となる患者・処方の判定基準、処方箋やレセプトへの記載、窓口での説明方法などは、今後の告示・通知を含めて確定していきます。
OTC類似薬とは
OTCは、薬局やドラッグストアなどで処方箋なしに購入できる医薬品を指します。一方のOTC類似薬は、一般に市販薬と成分や効能が近い医療用医薬品を指しますが、厚生労働省の中間とりまとめは「明確かつ共通の定義は存在しない」と説明しています。
今回の最初の対象は、OTC医薬品と成分・投与経路が同一で、1日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分です。2026年8月1日時点で1,042品目が示されており、鼻炎、胃痛・胸やけ、便秘、解熱・痛み止め、風邪症状、腰痛・肩こり、みずむし、口内炎、皮膚のかゆみ・乾燥などに使われる薬が含まれます。
ただし、77成分に該当すれば、どの病気・どの処方でも必ず別途負担になるわけではありません。市販薬に認められていない効能・効果を目的に医療用医薬品を使う場合などは、別途負担を求めない方向で整理されています。
自己負担はどう変わる?
対象となる処方では、診察料や調剤料などの通常の保険診療の自己負担に加えて、対象薬剤の薬剤費の4分の1に相当する「特別の料金」を支払う仕組みが示されています。特別の料金には消費税がかかる想定です。
ここで注意したいのは、「医療費全体が一律25%増える」わけではないことです。4分の1の基準になるのは対象薬剤の薬剤費であり、診察料や検査料まで4分の1上乗せされる制度ではありません。また、年齢や所得に応じた通常の窓口負担割合と、保険外の特別料金は別のものです。
特別の料金は保険給付の自己負担ではないため、高額療養費の対象になる費用と同じ扱いだと決めつけないことも重要です。高額療養費の仕組みは「高額療養費制度の上限と対象外費用」で詳しく整理しています。
別途負担の対象外となる可能性がある人・処方
厚生労働省の中間とりまとめや医療保険部会資料では、必要な受診や治療を妨げないため、次のような患者・処方への配慮が検討されています。
- 子ども
- 生活保護の医療扶助を受ける人などの低所得者
- がん治療や指定難病などに関連する処方
- 入院中や退院時の処方
- 処置・手術・検査に伴う一定日数までの処方
- 医師が長期使用を医療上必要と判断する場合
- 妊娠・授乳などにより該当する市販薬を使用できない場合
ただし、「がん患者なら別の病気の処方もすべて対象外」「慢性疾患なら自動的に免除」と決まったわけではありません。治療との関連性や使用期間など、個別の判断基準が示されています。対象外となる範囲は最終的な告示・通知で確認する必要があります。
家計への影響が大きくなりやすい人
短期間だけ薬を使う人より、対象成分を繰り返し処方されている人の方が、年間の追加負担は大きくなりやすいと考えられます。家族で複数人が定期的に受診している世帯も、家計簿の「医療費」を少し厚めに見積もっておくと安心です。
一方、市販薬へ切り替えれば必ず安くなるとは限りません。市販薬は全額自己負担で、容量や用法も医療用と同じとは限らないためです。受診料、薬剤費、調剤料、購入頻度を含めて比較する必要があります。
制度変更を理由に民間医療保険へ急いで加入したり、保障を増やしたりする必要もありません。一般的な医療保険は、日常的な通院薬の小さな自己負担をすべて埋める設計ではないためです。公的保障、貯蓄、勤務先の給付を先に確認する考え方は「民間の医療保険は必要?判断基準」も参考にしてください。
いま確認しておきたい4つのこと
- 薬を自己判断で中止しない:対象かもしれないという理由だけで服用をやめず、医師・薬剤師へ相談する
- 処方の目的を確認する:同じ成分でも、病気や効能によって別途負担の扱いが異なる可能性がある
- 定期処方の年間額を把握する:お薬手帳や領収書から、薬剤費と受診頻度を確認する
- 施行前の公式案内を見る:対象成分、除外要件、施行日、窓口計算は今後更新されるため、厚生労働省や加入先の健康保険の案内を確認する
FPの判断軸では、月々の追加負担だけでなく、必要な治療を続けられる現金余力を確保することが先です。数年以内に使うお金や生活防衛資金まで投資に回している場合は、医療費の予備枠も含めて資金配分を見直しましょう。
よくある質問
2027年3月から、すべてのOTC類似薬が保険適用外になりますか?
いいえ。制度は薬剤費の一部を「特別の料金」として別途負担する枠組みで、診察や薬の残りすべてが自由診療になるという説明ではありません。最初の対象は77成分で、対象外となる患者・処方も検討されています。
薬剤費の4分の1が、そのまま追加負担額ですか?
基本枠組みは対象薬剤の薬剤費の4分の1です。ただし、通常の窓口負担との組み合わせ、消費税、複数薬剤がある場合の表示など、実際の請求は施行前の公式案内で確認してください。
子どもは必ず追加負担がありませんか?
厚生労働省資料では、18歳年度末までの子どもを別途負担の対象外とする方向が示されています。ただし、年齢確認や公費負担医療との関係を含め、最終的な告示・運用通知の確認が必要です。
市販薬へ切り替えるべきですか?
一律には判断できません。症状、持病、併用薬、妊娠・授乳、長期使用の必要性によっては医師の診察と処方が重要です。費用だけで決めず、医師または薬剤師へ相談してください。
民間医療保険で追加負担を補えますか?
契約内容によりますが、日常的な薬代の増加を直接補うとは限りません。給付条件を確認し、まずは公的制度と預貯金で対応できる範囲を整理しましょう。
まとめ
OTC類似薬の保険給付見直しは、2027年3月の施行を想定して具体化が進んでいます。現時点で示されている基本は、77成分を対象に薬剤費の4分の1を特別料金として別途負担することです。
一方、配慮が必要な患者・処方の範囲や現場での計算・説明方法は、9月9日の中医協を含め審議が続いています。薬を自己判断でやめず、施行前の公式情報を確認し、定期的な医療費を家計に織り込んでおきましょう。
