米国の投資信託やETFが、公開市場を通さずにグループ内の別ファンドと有価証券を売買できる範囲を広げる案が示されました。実現すれば取引コストの低下が期待される一方、価格の公正さや利益相反をどう管理するかが重要になります。

何が起きたか

確認済みの事実として、米証券取引委員会(SEC)は2026年10月9日、投資会社法のルール17a-7を改正する案を公表しました。このルールは、一定の条件下で登録投資会社と関係会社の間の「クロストレード」を認めるものです。SECの公表資料によると、対象を拡大し、現在は事実上制限されている多くの債券も取引可能にすることが柱です。

提案には、価格決定と監督に関する条件の見直し、クロストレードを行うファンドによる取引状況の集計報告も含まれます。現時点では最終決定ではなく、連邦官報への掲載後60日間の意見募集を経ます。

背景

クロストレードでは、同じ運用グループ内の一方のファンドが売りたい証券を、別のファンドが買うことがあります。通常の市場売買で発生する売買スプレッドや仲介コストを抑えられる可能性があります。

一方、売り手には高く、買い手には安く取引することが望ましいため、双方の受益者に公平な価格かを検証する必要があります。SECは1966年にルールを導入しましたが、2020年の評価ルールによって多くの債券のクロストレードが難しくなっていました。今回の案は、価格情報の透明性が高まった市場環境を踏まえた見直しです。

投資家への影響

市場の見方として、適切に実施されれば、ファンドが負担する取引コストを減らし、基準価額の押し下げ要因を小さくできる可能性があります。特に株式より売買コストが見えにくい債券では、運用効率の改善余地があります。

ただし、コスト削減がそのまま高い運用成績を意味するわけではありません。価格評価が不十分なら、一方のファンドから別のファンドへ不利な条件で資産が移る利益相反も起こり得ます。報告の拡充と運用会社の監督が実効性を持つかが焦点です。

NISA利用者・家計への影響

日本のNISA制度が変わる話ではありません。ただし、NISAで米国籍ETFや、米国債券を組み入れる国内投資信託を保有している場合、将来の運用コストや売買の仕組みに間接的な影響が及ぶ可能性があります。

利用者が今すぐ売買する理由にはなりません。目論見書や運用報告書で、信託報酬だけでなく売買委託手数料、売買回転率、ベンチマークとの乖離を継続して確認することが重要です。

FP松尾の視点

FP松尾としては、低コスト化の可能性は歓迎できる一方、「グループ内取引だから安い」とだけ受け取らないことが大切だと考えます。投資信託やETFは、表面上の信託報酬に加え、売買コストや価格形成の公正さも受益者のリターンに影響します。

NISAでは長期保有が前提になりやすいため、制度案のニュースで銘柄を入れ替えるより、低コスト、十分な純資産、分散、運用実績という基本条件を優先する方が合理的です。

注意点・反対の見方

今回の内容は提案段階で、意見募集を経て変更または見送られる可能性があります。また、すべてのファンドがクロストレードを利用するとは限らず、日本で販売される商品への影響も商品ごとに異なります。コスト削減効果と利益相反リスクのどちらが大きいかは、最終ルールと各運用会社の実務を確認する必要があります。

まとめ

SECは、登録投資会社のクロストレード対象を広げ、多くの債券を再び扱えるようにする案を公表しました。取引コスト低下が期待される一方、公正な価格と利益相反管理が不可欠です。NISA利用者は直ちに行動を変えず、最終決定と保有商品の運用報告を確認しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。