金融庁は2026年9月9日、台風第24号と前線による大雨を受けた「金融上の措置」を更新しました。9月7日の鹿児島県に続き、東海財務局と日本銀行名古屋支店が愛知県内の金融機関などにも特別対応を要請しています。
災害救助法の適用地域は、愛知県名古屋市(適用日9月8日)と鹿児島県熊毛郡屋久島町(適用日9月4日)です。通帳や印鑑を失った場合の預金払戻し、ローン返済の猶予・条件変更、保険金請求や保険料払込の猶予など、被災状況に応じた柔軟な対応が求められています。
ただし、これは金融機関や保険会社に対する対応要請であり、すべての手続きが自動的に免除されたり、保険金が一律に支払われたりする制度ではありません。被害を受けた方は、安全を確保したうえで、利用している金融機関・保険会社・代理店へ早めに相談することが大切です。
今回発表された内容と対象地域
内閣府は9月9日、災害救助法の適用状況を第2報へ更新しました。対象は、愛知県名古屋市(法適用日9月8日・公示日9月9日)と鹿児島県熊毛郡屋久島町(法適用日9月4日・公示日9月5日)の1市1町です。
屋久島町については、九州財務局鹿児島財務事務所と日本銀行鹿児島支店が9月7日に要請しました。名古屋市の追加を受け、東海財務局と日本銀行名古屋支店は9月9日、愛知県内の被災者等に対応する金融機関・保険会社などへ同様の措置を要請しています。
特別対応の窓口や必要書類は、利用する金融機関・保険会社と被災状況によって異なります。対象地域がさらに更新される可能性もあるため、手続き前に金融庁、内閣府、契約先の最新案内を確認してください。
保険で相談できる特別対応
生命保険会社、損害保険会社、少額短期保険業者には、次のような対応が要請されています。
- 保険証券や届出印鑑を失っていても、契約内容を確認できる場合は保険金請求を案内する
- 生命保険金・損害保険金をできる限り迅速に支払う
- 被災状況に応じて、保険料の払込猶予期間を延長する
日本損害保険協会は、名古屋市と屋久島町の被災契約者について、火災保険・自動車保険・傷害保険など各種損害保険(自賠責保険を除く)の継続契約手続きと保険料払込を2026年11月末まで猶予すると案内しています。適用日は名古屋市が9月8日、屋久島町が9月4日です。詳細は契約先への確認が必要です。
台風・大雨の被害がすべて補償されるわけではない
住宅の損害は、火災保険に風災・水災などの補償が含まれているかで扱いが変わります。強風による屋根・窓の破損と、洪水・土砂崩れ・浸水による被害は、同じ台風による損害でも確認する補償項目が異なります。免責金額や支払条件も契約によって違います。
冠水や洪水で車が損害を受けた場合は、自動車保険の車両保険で補償されることがあります。一方、自賠責保険や対人・対物賠償だけでは自分の車の損害は補償されません。基本的な役割の違いは、自賠責保険と任意保険の補償範囲で確認できます。商品名ではなく、現在の契約にどの補償が付いているかを確認してください。
地震・噴火・津波が原因の住宅被害は、原則として火災保険だけでは補償されません。災害原因ごとの違いは、火災保険と地震保険の補償範囲も参考にしてください。
通帳・印鑑を失った場合の預金対応
預貯金を取り扱う金融機関には、通帳、預金証書、届出印鑑などを紛失した場合でも、被災状況を踏まえた本人確認によって払戻しに応じるよう要請されています。
そのほか、事情に応じた定期預金・定期積金の期限前払戻し、損傷した紙幣・貨幣の引換え、休日や営業時間外の対応、ATMによる払戻し確保なども要請内容に含まれます。
本人確認の方法や払戻し上限は金融機関ごとに異なる場合があります。口座番号が分からなくても、氏名・生年月日・住所など確認可能な情報を準備し、まず取引金融機関の災害相談窓口へ連絡してください。
住宅ローン・事業融資の返済が難しい場合
金融機関には、被災者の資金需要や状況を踏まえ、融資相談、提出書類の簡略化、融資手続きの迅速化、既存融資の返済猶予や条件変更などを検討するよう要請されています。
住宅ローンや事業融資の返済が難しいと感じたときは、延滞してからではなく、見通しが立たない段階で金融機関へ相談しましょう。返済猶予は債務がなくなることを意味せず、猶予後の返済額や利息、期間がどう変わるかを確認する必要があります。
また、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の利用相談にも応じるよう求められています。新たな借入れや資産処分を急ぐ前に、金融機関や専門窓口で利用条件と効果を確認してください。
被害を受けたら先に行う5つのこと
- 安全を最優先する:避難情報や立入規制に従い、危険な場所へ写真撮影のために戻らない
- 被害を記録する:安全が確認できたら、建物全体と損傷箇所、浸水の高さ、家財や車の状態を複数方向から撮影する
- 保険会社・代理店へ連絡する:片付けや修理を進める前に、必要な写真・見積書・保存物を確認する
- 金融機関へ相談する:通帳等の紛失、当面の生活資金、ローン返済について困っている内容を具体的に伝える
- 契約を急がない:「保険で無料修理できる」と勧誘する業者や、高額な成功報酬を求める申請代行業者とその場で契約しない
FPの視点では、保険金だけを確認するのではなく、預貯金、住宅ローン、当面の生活費、公的支援を同時に整理することが重要です。生活費の口座まで被害を受けた場合は、「使う・備える・育てる」お金の分け方も参考に、当面使う資金を最優先してください。
よくある質問
保険金請求に罹災証明書は必要ですか?
日本損害保険協会は、損害保険金の請求では地方自治体の罹災証明書は原則不要と案内しています。ただし、事故や契約の内容により追加書類を求められることがあります。先に契約先へ必要書類を確認してください。
保険証券も保険会社名も分からない場合は?
災害救助法の適用地域で、家屋の流失・焼失などにより契約の手掛かりを失った場合は、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」を利用できる場合があります。原則として本人または一定範囲の親族が照会できます。
保険料の払込猶予は自動で適用されますか?
契約先による確認が必要です。名古屋市と屋久島町では11月末までの猶予が案内されていますが、対象契約や手続き方法を保険会社・代理店へ確認してください。猶予は保険料の免除ではありません。
被害写真を撮る前に片付けてもよいですか?
衛生面や安全面から片付けが必要な場合は無理に残す必要はありません。可能な範囲で全景、損傷箇所、浸水線、廃棄する物を撮影し、保険会社の案内に従ってください。
関連動画
水災補償の基本と確認ポイントは、FPマツオの動画でも解説しています。
まとめ
9月9日の更新により、金融上の措置は鹿児島県に加えて愛知県でも要請されました。現時点の災害救助法適用地域は名古屋市と屋久島町で、損害保険の継続手続きと保険料払込は両地域とも11月末まで猶予されます。
ただし、対応内容は契約や被災状況によって異なります。安全確保、被害記録、保険会社・代理店への連絡、金融機関への相談の順で進め、第三者の申請代行や修理契約を急がないようにしましょう。
