病気やけがが長引き、仕事や日常生活に大きな制限が残ったとき、生活を支える公的保障の一つが障害年金です。「障害者手帳がないともらえない」「働いていたら対象外」と思われがちですが、いずれも一律にそう決まるわけではありません。
結論
障害年金は、病名だけでなく、初診日・保険料の納付状況・法令上の障害状態の3点を中心に審査されます。初診日に国民年金へ加入していた人などは障害基礎年金、厚生年金へ加入していた会社員などは、要件に応じて障害厚生年金も対象になります。請求が遅いと受給開始時期や遡及分に影響するため、療養が長期化したら早めに年金事務所へ相談することが大切です。
障害年金とは
障害年金は、病気やけがによって一定の障害状態になった人へ、国民年金・厚生年金から支給される年金です。事故による外傷だけでなく、がん、心疾患、糖尿病、腎疾患、精神疾患なども、要件を満たせば対象になり得ます。
制度上の障害等級は、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳などの等級とは別の基準です。手帳の有無や等級だけで、障害年金の支給可否は決まりません。
障害基礎年金と障害厚生年金の違い
受けられる年金の種類は、原則として障害の原因となった傷病の初診日にどの年金制度へ加入していたかで変わります。
- 障害基礎年金:初診日が国民年金加入中、20歳前、または一定の60歳以上65歳未満の未加入期間にある人が対象。等級は1級・2級
- 障害厚生年金:初診日が厚生年金加入中にある人が対象。等級は1級・2級・3級
会社員などが障害厚生年金の1級・2級に該当する場合は、原則として同じ等級の障害基礎年金もあわせて受け取ります。3級は障害厚生年金だけです。3級より軽い一定の障害が残った場合には、障害手当金という一時金の対象になることもあります。
受給条件は3つ
1.初診日の要件
初診日は、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。現在の診断名がついた日とは限りません。転院している場合は、最初の医療機関の受診日が重要になります。
2.保険料納付の要件
原則として、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることが必要です。
初診日が2036年3月末までで、初診日時点で65歳未満なら、前々月までの直近1年間に未納がないという特例でも判定されます。20歳前の年金未加入期間に初診日がある場合は、納付要件はありません。初診後にさかのぼって保険料を納めても、納付要件の判定には間に合わない点に注意してください。
3.障害状態の要件
障害認定日またはその後に、法令で定める障害状態に該当する必要があります。障害認定日は原則として、初診日から1年6か月を過ぎた日です。1年6か月以内に症状が固定した場合や、人工透析など一部の傷病には例外があります。
障害等級の大まかな違い
1級は日常生活の多くで他人の介助が必要な程度、2級は日常生活が極めて困難な程度、障害厚生年金の3級は労働に著しい制限がある程度が目安です。実際の認定は傷病別の基準と診断書などで個別に行われます。
2026年度の障害年金はいくら?
2026年4月分からの障害基礎年金は、昭和31年4月2日以後生まれの人について次の年額です。
- 1級:1,059,125円+子の加算
- 2級:847,300円+子の加算
- 子の加算:1人目・2人目は各243,800円、3人目以降は各81,300円
たとえば2級で対象となる子が1人いる場合は、年額1,091,100円です。単純に12で割ると月額約90,900円ですが、実際の年金は原則として偶数月に2か月分ずつ支払われます。
障害厚生年金は、加入期間中の報酬と加入月数を使う報酬比例の計算です。1級は報酬比例額の1.25倍、2級は報酬比例額で、要件を満たす配偶者がいる場合は年額243,800円が加算されます。3級の最低保障額は、昭和31年4月2日以後生まれの人で年額635,500円です。
障害厚生年金の正確な金額は給与だけでは計算できません。年金記録をもとに、年金事務所で確認してください。年金額は毎年度改定されるため、将来の家計計画では固定額と考えないことも大切です。
いつから受け取れる?2つの請求方法
障害認定日による請求
障害認定日に該当する障害状態にある場合は、原則として認定日の翌月分から受給できます。後から請求することもできますが、時効により遡って受け取れるのは原則5年分までです。
事後重症による請求
障害認定日には該当しなくても、その後に症状が重くなって基準に該当した場合は、事後重症による請求ができます。この場合は請求日の翌月分から支給され、認定日まで遡りません。請求は原則として65歳の誕生日の前々日までに行う必要があります。
「回復を待ってから考えよう」と先延ばしにすると、受け取れる期間が短くなる場合があります。対象か判断できない段階でも、まず相談日を確保しましょう。
申請方法と必要書類
一般的な流れは次のとおりです。
- 年金事務所または市区町村窓口へ相談し、初診日と加入記録を確認する
- 初診時の医療機関から受診状況等証明書を取り寄せる
- 所定様式の診断書を医師に作成してもらう
- 病歴・就労状況等申立書と年金請求書を作成する
- 戸籍・住民票・受取口座など必要書類を添えて提出する
初診時の医療機関と診断書を作成する医療機関が同じ場合など、状況によって必要書類は変わります。診断書には使用期限があるため、先に窓口で請求時期と必要な様式を確認してから医師へ依頼すると進めやすくなります。
障害基礎年金は原則として住所地の市区町村役場、初診日が第3号被保険者期間中の場合や障害厚生年金は年金事務所・街角の年金相談センターが窓口です。
働きながらでも受給できる?
働いていることだけを理由に、障害年金が必ず不支給・停止になるわけではありません。障害の種類によっては、仕事内容、勤務時間、職場の援助、欠勤状況、日常生活の制限なども含めて障害状態が判断されます。
一方、20歳前の傷病による障害基礎年金には本人所得による支給制限があります。受給後も障害状態の確認が行われ、等級変更や支給停止となることがあります。就労状況を隠さず、診断書や申立書に実態を具体的に記載することが重要です。
傷病手当金・民間保険との関係
傷病手当金は、会社員などが病気やけがで休業したときの短中期の所得保障で、支給期間は通算1年6か月が基本です。障害年金は一定の障害状態が続く場合の長期的な所得保障で、制度の目的と要件が異なります。
両方の要件を満たす期間は併給調整が行われることがあります。労災保険の障害給付など他制度との調整もあるため、受け取れる金額を単純に足さず、各窓口で確認してください。
FPの保障設計では、まず障害年金、傷病手当金、勤務先の休職制度、生活防衛資金を確認し、それでも続く収入不足を民間の就業不能保障などで補う順番が基本です。治療費は高額療養費制度、民間保障の考え方は医療保険の必要性もあわせて確認してください。
よくある質問
障害者手帳がなくても請求できますか?
できます。障害年金と障害者手帳は別制度です。手帳を持っていることは参考資料になる場合がありますが、年金は独自の認定基準で審査されます。
うつ病など精神疾患も対象ですか?
精神疾患も対象になり得ます。病名だけではなく、日常生活や就労にどの程度の制限があるかなどを、診断書と申立書に基づいて個別に審査します。
障害年金に所得税はかかりますか?
障害年金は非課税所得です。ただし、20歳前の傷病による障害基礎年金には本人所得による支給制限があり、非課税であることと支給制限の判定は別の話です。
初診日の病院が廃院している場合は?
初診日を確認できる別の資料や申立てを検討します。診察券、お薬手帳、紹介状、健康保険の給付記録などが手がかりになる場合があるため、自己判断で諦めず年金事務所へ相談してください。
まとめ
障害年金は、病気やけがで生活・仕事に大きな制限が残ったときの公的な所得保障です。初診日の加入制度によって障害基礎年金・障害厚生年金が分かれ、初診日、保険料納付、障害状態の要件を満たす必要があります。
特に重要なのは、初診日の記録を残すことと、請求を先延ばしにしないことです。民間保険を増やす前に、公的保障、勤務先制度、貯蓄を確認し、家計の不足額を整理しましょう。
参考にした公的情報
- 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」
- 日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」
- 日本年金機構「障害認定日」
- 厚生労働省「障害基礎年金(2026年度版)」
- 日本年金機構「非課税所得とは」
本記事は2026年9月11日時点の公表情報に基づく一般的な制度解説です。実際の受給可否、等級、金額、必要書類は個別事情で異なるため、年金事務所などへ確認してください。
