確認済みの事実:金融庁は2026年9月18日、2026年3月末基準の「投資信託の共通KPIに関する分析」を公表しました。報告のあった244の金融事業者を単純平均すると、投資信託の運用損益が0%以上だった顧客の割合は85.5%。2025年3月末の71.5%から大きく上昇しています。
ただし、この数字だけを見て「どの投資信託を買っても約9割の人が利益を得られる」と考えるのは早計です。今回は、共通KPIの意味と、NISA利用者が販売会社や商品を比較するときの使い方を整理します。
何が起きたか
金融庁の共通KPIは、投資信託を保有する顧客の購入時以降のリターンを同じ定義で比較するための指標です。計算には基準日の評価額だけでなく、累計分配金、累計売却額、手数料込みの累計買付額が反映されます。
2026年3月末は、主要行、地域銀行、証券会社、投資運用業者など全業態で、損益がプラスの顧客割合が前年より上昇しました。一方、預かり残高上位20銘柄の分析では、前年と比べて平均リターンは低下、コストは小幅低下、リスクは小幅上昇。コストに対するリターン、リスクに対するリターンはいずれも低下しています。
背景
市場の見方:顧客損益の改善には、株価や為替など基準日時点の市場環境が大きく影響します。また、同じ金融事業者でも、取扱開始時期、顧客の保有期間、販売している商品の構成によって結果は変わります。1年間で販売会社の実力だけが急上昇した、と単純には判断できません。
金融庁も、共通KPIは事業者を比較する材料の一つとして位置づけています。リスト掲載は金融庁による推奨や商品品質の保証ではなく、各社の報告データも金融庁が正確性を保証するものではないと明記されています。
投資家への影響
共通KPIで特に確認したいのは、プラスの顧客割合だけではありません。預かり残高上位商品のコストとリターン、リスクとリターンを合わせて見ることで、「高いコストに見合う成果が続いているか」「値動きの大きさに対してリターンが妥当か」を考えやすくなります。
ただし、過去5年間の実績は将来の成績を保証しません。ランキングの上位だけを理由に販売会社や商品を選ぶと、相場環境が変わったときに期待とのずれが生じる可能性があります。
NISA利用者・家計への影響
NISAの積立では、短期の含み益よりも、目的、運用期間、許容できる値下がり幅、信託報酬を優先して確認したいところです。今回の85.5%は2026年3月末という一時点の集計であり、毎月積み立てる人全員の将来損益を示す数字ではありません。
家計面では、生活防衛資金を確保したうえで、値下がり時にも続けられる積立額にすることが基本です。プラスの人が多い局面で積立額を急に増やすより、収入と支出から無理のない金額を決める方が長期運用には向いています。
FP松尾の視点
FP松尾としての見解:共通KPIの価値は、「儲かった人が多い販売会社」を探すことより、金融機関ごとの商品構成やコストを比較する入口になる点にあります。相談時には、KPIに加えて、提案商品の信託報酬、解約条件、リスク、担当者の説明内容まで確認するのが現実的です。
注意点・反対の見方
プラス顧客比率の上昇は、長期投資の有効性を示す材料と見ることもできます。一方で、基準日が変われば割合も動きます。保有期間の短い顧客が多い事業者や取扱商品が偏る事業者は、他社と単純比較できません。数字は結論ではなく、質問を作るための材料として使うのが適切です。
まとめ
2026年3月末時点で、投資信託の運用損益がプラスの顧客割合は全業態平均85.5%でした。ただし、平均リターンやリスク・リターンは前年より低下しており、プラス割合だけでは商品の良し悪しを判断できません。NISAでは、共通KPI、コスト、運用方針、家計の継続可能性をセットで確認しましょう。
参照:金融庁「金融事業者リスト、投資信託・外貨建保険の共通KPIに関する分析結果」/投資信託の共通KPIに関する分析(PDF)
