厚生労働省は2026年10月23日、2023年3月に卒業して就職した人の「就職後3年以内の離職率」を公表しました。新規大学卒は31.2%、新規高校卒は36.9%です。前年の公表値より低下したものの、卒業後3年以内に離職する人は大卒でおよそ3人に1人、高卒ではそれより多い水準です。

今回の公表は制度改正ではなく、雇用保険や健康保険の仕組みが10月23日から変わったわけではありません。ただし、退職を考えている本人と家族にとっては、収入が途切れる期間、社会保険の切替え、離職票、失業手当を早めに確認するきっかけになります。

何が公表されたのか

厚生労働省の発表によると、2023年3月卒業者の就職後3年以内離職率は、高卒36.9%、大卒31.2%でした。前年と比べると、高卒は1.0ポイント、大卒は2.6ポイント低下しています。中卒は54.5%、短大等は43.1%でした。

事業所規模による差もあります。従業員5人未満の事業所では、高卒61.3%、大卒58.2%でした。一方、従業員1,000人以上では高卒24.4%、大卒24.2%です。ただし、小規模企業だから必ず早期離職する、大企業なら安心という意味ではありません。採用人数、仕事内容、地域性などが異なるため、数字は傾向として見る必要があります。

産業別では、高卒・大卒ともに宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業の離職率が高い結果でした。医療・福祉、教育・学習支援業、小売業も上位に含まれています。

いつから変わる?今回は制度変更ではない

発表日は2026年10月23日ですが、離職率の対象は2023年3月卒業者の卒業後3年間です。今回、新しい給付や保険料が始まったわけではありません。「10月から若者の失業手当が増える」といった内容ではない点に注意してください。

また、3年以内離職率は「3年間ずっと失業している人の割合」でもありません。離職後すぐに転職した人、進学や独立を選んだ人も含みます。離職率だけで雇用環境の良し悪しや本人のその後を断定することはできません。

誰に影響するニュースか

影響が大きいのは、就職後3年以内で退職を考えている人と、その生活を支える家族です。とくに一人暮らし、奨学金返済中、家賃や自動車ローンがある場合は、退職日を決める前に「無収入で何か月暮らせるか」を確認する必要があります。

企業側にとっては採用後の定着支援、仕事内容や労働条件の説明、相談窓口の整備を見直す材料です。ただし、離職を一律に悪いことと捉える必要はありません。心身の不調やハラスメント、労働条件の不一致がある場合は、生活資金と公的制度を確認したうえで、早めに相談することが大切です。

退職前に確認したい5つのお金

1.生活費の予備資金
家賃、食費、通信費、奨学金、保険料など、毎月必ず出ていく金額を確認します。失業手当は退職翌日から自動的に振り込まれるものではないため、少なくとも手続きから初回入金までをつなぐ現金が必要です。

2.離職票と離職理由
失業手当の手続きには離職票が必要です。2025年1月からは、条件を満たせばマイナポータルで離職票を直接受け取れる仕組みもあります。離職理由によって受給要件や給付制限が変わることがあるため、記載内容に相違がないか確認しましょう。

3.雇用保険の基本手当
ハローワークの案内では、原則として離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇などの特定受給資格者や一部の特定理由離職者は、離職前1年間に通算6か月以上でも対象になり得ます。就職後間もない退職では加入期間が足りない場合があるため、思い込みで見込まないことが重要です。詳しい申請手順は失業手当の解説記事も確認してください。

4.退職後の健康保険
次の勤務先へすぐ移らない場合、健康保険は任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者という選択肢があります。協会けんぽでは、任意継続は退職日までに被保険者期間が継続2か月以上あり、退職日の翌日から20日以内の手続きが必要と案内しています。保険料は世帯状況や前年所得で変わるため、国民健康保険と比較してください。

5.国民年金の切替え
20歳以上60歳未満で、退職後に厚生年金へ加入しない期間がある場合は、原則として国民年金第1号被保険者への切替えが必要です。日本年金機構は、保険料の納付が難しい場合の免除・納付猶予制度も案内しています。未納のまま放置せず、該当する制度を確認しましょう。

FP実務での見方

FPの視点では、退職するかどうかだけでなく、退職後90日間の資金繰りを先に作ることが重要です。現預金、最後の給与、退職金の有無、失業手当を受けられる時期、健康保険料、国民年金、住民税を時系列で並べると、必要な生活予備費が見えます。

若い世代では「まだ貯蓄が少ないから家計管理は後でよい」と考えがちですが、収入が途切れる時期ほど少額の固定費が効きます。民間保険をすぐ解約するのではなく、保障内容、解約返戻金、再加入時の健康状態を確認し、通信費やサブスクリプションなど変更しやすい支出から順に見直すのが基本です。

退職を考えたら今確認すること

最初に雇用保険の加入期間と離職理由を確認し、会社へ離職票の交付方法を確認します。次に、退職後の健康保険3案の保険料を比較し、国民年金の切替えや免除・猶予の対象を確認します。そのうえで、少なくとも次の仕事が決まるまでの家計表を作りましょう。

大学等を卒業後おおむね3年以内であれば、新卒応援ハローワークを無料で利用できます。求人紹介だけでなく、応募書類や面接、職場定着に関する相談も対象です。体調や職場トラブルが理由の場合は、会社以外の相談窓口も利用してください。

FAQ

新卒で3年以内に辞めると転職で必ず不利になりますか?

必ず不利になるとは限りません。退職理由を他責だけで説明せず、経験したこと、次の職場で実現したいこと、同じ問題を繰り返さないために確認する条件を整理することが大切です。統計上の離職率は個人の評価を決めるものではありません。

就職から1年未満でも失業手当を受けられますか?

自己都合退職では被保険者期間が足りず、受給できない場合があります。一方、倒産・解雇や一部の特定理由離職者は要件が異なります。離職票の離職理由と加入期間を確認し、ハローワークで個別に判断を受けてください。

次の会社がすぐ決まっていても手続きは必要ですか?

退職日の翌日から次の入社日まで空白がなければ、健康保険や厚生年金は次の勤務先で手続きされるのが一般的です。空白期間がある場合や加入条件を満たさない働き方の場合は、自分で健康保険と年金の切替えが必要になることがあります。

まとめ

2023年3月卒業者の就職後3年以内離職率は、大卒31.2%、高卒36.9%でした。これは2026年10月23日に公表された統計であり、新しい制度の施行ではありません。退職を検討する際は、離職率の数字だけで判断せず、生活費、失業手当、健康保険、国民年金、住民税を確認し、退職後の資金繰りを作ってから行動しましょう。

一次情報

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和5年3月卒業者)」
ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
協会けんぽ「退職後の健康保険」
日本年金機構「退職後の国民年金・免除制度」