退職後の生活を支える「失業手当」は、正式には雇用保険の基本手当といいます。ただし、会社を辞めれば自動的にもらえるわけではありません。雇用保険の加入期間に加え、「すぐに働ける状態で、仕事を探していること」が必要です。

受け取れる1日あたりの金額は、原則として退職前6か月の賃金をもとに計算され、おおむね賃金日額の50〜80%です。給付日数は一般的な離職者で90〜150日。自己都合退職では7日間の待期に加え、原則1か月の給付制限があります。この記事では、2026年9月時点の制度をもとに、条件・金額・期間・申請方法を順に解説します。

失業手当をもらうための基本条件

基本手当は、離職した人が生活を心配しすぎずに再就職活動を進めるための給付です。受給するには、次の2つを満たす必要があります。

  • 就職する意思と能力があり、積極的に求職活動をしているにもかかわらず職業に就いていない
  • 原則として、離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上ある

倒産・解雇などの特定受給資格者や、一部の特定理由離職者は、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あれば対象になる場合があります。1か月として数えるには、賃金支払いの基礎となった日が11日以上、または労働時間が80時間以上あることが基準です。

病気やけが、妊娠・出産・育児などですぐに働けない場合は、原則として基本手当の「失業」の状態には当たりません。ただし、働けない状態が30日以上続くときは受給期間を延長できる場合があるため、早めにハローワークへ相談しましょう。なお、65歳以上で離職した人には、基本手当とは別に高年齢求職者給付金が一時金として支給される場合があります。

失業手当はいくらもらえる?

1日あたりの支給額を「基本手当日額」といいます。まず、離職直前6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割って「賃金日額」を求め、そのおよそ50〜80%(60〜64歳は45〜80%)が基本手当日額になります。賞与などは原則として計算に含みません。賃金が低い人ほど給付率が高くなる仕組みです。

計算例:月給15万円、給付日数90日の場合

直前6か月の賃金が毎月15万円なら、賃金日額は「15万円×6か月÷180=5,000円」です。2026年8月1日以降の基準では、この賃金日額の給付率は80%なので、基本手当日額は4,000円。90日分なら総額の目安は36万円です。

実際の支給額は、離職票に記載された賃金、年齢、離職日、認定された失業日数などにより決まります。概算だけで退職後の家計を組まず、受給資格者証に記載される基本手当日額を確認してください。

2026年8月1日以降の基本手当日額の上限

離職時の年齢 1日あたりの上限額
29歳以下 7,450円
30〜44歳 8,270円
45〜59歳 9,110円
60〜64歳 7,830円

全年齢共通の下限額は2,562円です。上限・下限や計算基準は毎年8月1日に変更される可能性があります。

いつからもらえる?7日間の待期と給付制限

ハローワークで求職申込みと受給資格決定の手続きをした後、まず通算7日間の待期があります。この期間は離職理由にかかわらず支給されません。

正当な理由のない自己都合退職で、離職日が2025年4月1日以降の場合は、7日間の待期が終わった後に原則1か月の給付制限があります。過去5年間に2回以上、正当な理由なく自己都合退職して受給資格決定を受けている場合や、重大な理由による解雇では3か月です。

なお、2025年4月以降は、一定の教育訓練等を離職前1年以内に受けた人、または離職後に受ける人は、申し出により給付制限が解除される制度があります。対象講座や申出期限が定められているため、該当しそうな場合はハローワークへ確認してください。

待期や給付制限が終わった日にすぐ振り込まれるわけではなく、指定された失業認定日に求職活動の状況などを申告し、認定を受けた後に支給されます。

何日もらえる?所定給付日数

一般的な自己都合退職など、特定受給資格者・就職困難者以外の所定給付日数は、雇用保険の被保険者期間に応じて次のように決まります。

被保険者期間 所定給付日数
1年以上10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

倒産・解雇等による離職者は、年齢と加入期間により90〜330日、就職困難者は150〜360日となります。離職理由は会社の記載だけで確定するものではなく、ハローワークが事実関係を確認して判定します。離職票の理由が実態と違う場合は、証拠となる資料を持参して相談しましょう。

基本手当を受けられる期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。手続きが遅れると、給付日数が残っていても期限を過ぎた分を受け取れないことがあります。

申請から受給までの流れ

  1. 会社から離職票(1・2)を受け取り、離職理由と賃金の記載を確認する
  2. 住所を管轄するハローワークで求職申込みを行い、離職票を提出する
  3. 受給資格決定後、指定された受給説明会に参加する
  4. 原則4週間に1回の失業認定日に、求職活動実績や就労状況を申告する
  5. 失業認定を受け、指定口座への支給を待つ

手続きでは、離職票、個人番号確認書類、本人確認書類、本人名義の通帳またはキャッシュカードなどが必要です。写真2枚も必要ですが、この手続きと以後の支給申請のたびにマイナンバーカードを提示する場合は省略できます。受付時間や必要書類は地域・状況により確認事項があるため、来所前に管轄ハローワークの案内を確認すると安心です。

FP視点で確認したい3つの注意点

1.受給開始までの生活費を先に確保する

自己都合退職では待期と給付制限があり、初回入金まで時間が空きます。退職前に、家賃・住宅ローン、社会保険料、税金、毎月の生活費を一覧にし、失業手当だけで足りない期間を預貯金で補えるか確認しましょう。家計のお金の分け方は、「使う・備える・育てる」の3分類も参考になります。

2.健康保険と年金の切替えを別に考える

退職後は、基本手当とは別に健康保険と年金の手続きが必要です。基本手当は所得税がかからない給付ですが、家族の健康保険の被扶養者判定では収入として扱われることがあります。基本手当日額などによって取扱いが異なるため、家族の勤務先や加入する健康保険へ確認してください。パートで再就職するときは、社会保険の加入条件も確認しましょう。

3.アルバイトや手伝いも必ず申告する

受給中にパート・アルバイト、内職、知人の手伝いをした場合は、報酬の有無にかかわらず失業認定申告書での申告が必要です。働いた時間や収入により、その日の基本手当が不支給・減額となる場合があります。申告せずに受給すると不正受給として処分される可能性があります。

よくある質問

失業手当に所得税や住民税はかかりますか?

雇用保険法に基づく失業等給付は非課税です。ただし、前年の所得に対する住民税や、退職後の社会保険料がなくなるわけではありません。退職後の資金計画では別枠で見込んでください。

会社から離職票が届かないときは?

まず会社に発送状況を確認し、それでも交付されない場合は住所を管轄するハローワークへ相談してください。会社が行方不明などの場合もハローワークが相談先です。

病気で働けない場合は失業手当と傷病手当金を両方もらえますか?

制度ごとに「働ける状態か」「健康保険の被保険者期間」などの要件が異なり、同じ期間に類似の給付を重ねて受けられない場合があります。退職前後に療養が必要な人は、健康保険の傷病手当金の条件も確認し、ハローワークと加入していた健康保険の両方へ相談してください。

まとめ

失業手当は、退職後の収入をすべて補う制度ではなく、再就職までの生活を支える雇用保険の給付です。まず、雇用保険の加入期間、離職理由、すぐに働ける状態かを確認しましょう。そのうえで、基本手当日額、所定給付日数、初回支給までの生活費、健康保険・年金・住民税を一緒に見通すことが大切です。

離職理由や就労状況によって扱いが変わるため、最終的な受給資格と金額は管轄のハローワークで確認してください。

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