国税庁は「令和8年分 年末調整のしかた」を公開し、2026年の年末調整で注意すべき改正点を案内しています。掲載ページには公開日の明記がありませんが、2026年9月7日時点の最新版では、基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件、生命保険料控除の特例が示されています。

結論

今回の変更は、原則として2026年12月1日に施行され、2026年分以後の所得税に適用されます。11月までの毎月の源泉徴収事務は変わらず、12月の年末調整で年間税額を精算します。扶養する家族の収入や年齢、本人が支払った生命保険料、勤務先の提出期限を早めに確認しましょう。

2026年の年末調整で変わる4項目

変更項目 主な内容 確認したい人
基礎控除 合計所得金額に応じて控除額を引上げ 原則としてすべての給与所得者
給与所得控除 最低保障額を65万円から74万円へ引上げ 主に給与収入が低い人
扶養親族等の所得要件 扶養親族などの所得上限を引上げ 配偶者や子などに収入がある世帯
生命保険料控除の特例 23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除を拡充 対象となる子などを扶養する世帯

「12月から制度が変わる」といっても、12月分の給与だけが対象になるわけではありません。2026年分の所得税について、改正後の控除を使って年税額を計算し、すでに源泉徴収された税額との差を年末調整で精算します。

基礎控除は所得に応じて引き上げ

基礎控除は、本人の合計所得金額に応じて適用される所得控除です。2026・2027年分は、合計所得金額が132万円以下なら104万円となり、それを超える場合も所得区分に応じて控除額が変わります。給与収入だけの場合、合計所得金額132万円以下の目安は給与収入206万円以下です。

所得が増えると控除額が段階的に変わるため、「全員の基礎控除が一律104万円になる」という理解は正確ではありません。給与以外の所得がある人や所得金額調整控除などを受ける人は、給与収入だけの目安表では判定できない場合があります。

給与所得控除の最低保障額は74万円へ

給与所得控除は、会社員やパートなどの給与収入から差し引く控除です。2026・2027年分は、最低保障額が65万円から74万円へ引き上げられました。国税庁の手引きでは、給与収入220万円以下の範囲について改正後の計算方法が示されています。

注意

税制上の「給与所得」と、勤務先の社会保険や健康保険の扶養判定で使う収入基準は別です。所得税の控除が広がっても、社会保険の加入条件や130万円基準が自動的に同じ金額へ変わるわけではありません。

扶養と社会保険の違いは、106万円の壁と社会保険の記事、現在検討が始まった制度については第3号被保険者制度の最新状況で整理しています。

扶養親族等の所得要件も変わる

扶養親族、同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子などの所得要件は、合計所得金額58万円以下から62万円以下へ引き上げられました。2026・2027年分に給与収入だけの場合は、給与収入136万円以下が目安です。

また、勤労学生の所得要件は85万円以下から89万円以下へ引き上げられ、給与収入だけの場合の目安は163万円以下です。配偶者特別控除や特定親族特別控除には別の所得範囲があるため、「家族の年収が136万円以下ならすべて同じ控除」とは限りません。

今回の改正で新たに扶養控除等の対象となる家族がいる場合は、勤務先へ扶養控除等(異動)申告書などの提出が必要です。国税庁は、異動月日と事由の欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載する例を示しています。

23歳未満の扶養親族がいる人は生命保険料控除を確認

2026・2027年分は、年齢23歳未満の扶養親族がいる場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除に特例が設けられました。対象者の一般生命保険料控除は、次の計算式を使います。

年間の新生命保険料 一般生命保険料控除額
3万円以下 支払額の全額
3万円超6万円以下 支払額×1/2+1万5,000円
6万円超12万円以下 支払額×1/4+3万円
12万円超 一律6万円

新生命保険料と旧生命保険料の両方を支払っている場合も、対象者の一般生命保険料控除の適用限度額は6万円です。通常の新契約の上限4万円から増えますが、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料を合わせた全体の適用限度額12万円は変わりません

同一世帯の夫婦に23歳未満の扶養親族である子がいる場合、国税庁の手引きでは夫婦双方がこの特例を受けられると示されています。ただし、それぞれが控除対象となる保険料を本人自身で支払い、受取人など通常の要件を満たす必要があります。

FPポイント

「控除上限が増えたから保険料を増やす」と先に決める必要はありません。所得控除額と実際に減る税額は同じではなく、税負担の軽減額は本人の所得や税率で変わります。保障の必要額、公的保障、貯蓄を確認したうえで、すでに支払っている保険料を正しく申告することが先です。

生命保険と家計の考え方は、民間の医療保険は必要?、保険料控除以外の税務については死亡保険金にかかる税金も参考にしてください。

年末調整の電子化とマイナポータル連携

保険会社などから控除証明書を電子データで取得し、対応ソフトへ取り込むと、申告書への転記や控除額の計算を減らせます。マイナポータル連携では、対応する生命保険料控除証明書、地震保険料控除証明書、住宅ローン控除関係書類などを取得できます。

ただし、勤務先が電子提出に対応しているか、どのソフトや社内システムを使うかは勤務先ごとに異なります。電子化は選択肢であり、紙の控除証明書が一律に使えなくなるわけではありません。

今から確認する5項目

  1. 本人の所得見込み:給与以外の所得も含める
  2. 家族の所得見込み:給与収入だけか、ほかの所得があるか
  3. 扶養親族の年齢:2026年12月31日時点の状況を確認する
  4. 保険料控除証明書:契約区分、支払者、年間支払額を確認する
  5. 勤務先の期限と提出方法:紙か電子か、追加書類が必要かを確認する

家族の年収が要件付近の場合は、給与明細だけでなく年末までの賞与や掛け持ち先の給与も合算します。事業・副業など給与以外の所得がある場合は、収入ではなく必要経費を差し引いた所得で判定する項目もあります。

よくある質問

2026年11月までの給与から手取りが変わりますか?

今回の改正による毎月の源泉徴収事務は、2026年11月まで変更されません。2026年分は12月の年末調整で改正後の控除を適用して精算し、2027年分以後の源泉徴収税額表も改正されます。

給与収入136万円以下なら社会保険の扶養にも入れますか?

一概にはいえません。136万円は今回の所得税上の扶養親族等に関する目安です。健康保険の被扶養者認定や勤務先の社会保険加入要件は別に確認してください。

23歳未満の子がいれば、生命保険料控除は必ず6万円ですか?

必ず6万円になるわけではありません。新生命保険料の支払額に応じて計算し、12万円を超えて支払った場合に一般生命保険料控除が6万円になります。契約区分や支払者など通常の控除要件も必要です。

生命保険料控除全体の上限も増えますか?

増えません。特例の対象者は一般生命保険料控除の上限が変わりますが、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除との合計上限は12万円のままです。

マイナポータル連携は必須ですか?

必須ではありません。勤務先が指定する方法に従い、紙または電子データで提出します。利用する場合は、マイナンバーカードや電子証明書の有効期限も早めに確認しましょう。

まとめ

2026年分の年末調整では、12月1日から基礎控除、給与所得控除、扶養親族等の所得要件が変わり、23歳未満の扶養親族がいる人には生命保険料控除の特例が適用されます。

税制上の扶養と社会保険の扶養を混同せず、家族の所得見込み、保険料の支払状況、勤務先の提出方法を確認しましょう。控除を増やすために新しい保険へ加入するのではなく、現在の保障が家計に合っているかを先に整理することが大切です。

参考にした公的情報

本記事は2026年9月7日時点で確認できる公表情報に基づきます。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」は、2026年7月1日現在の法令に基づいて作成されています。個別の申告は勤務先、税務署、税理士などへ確認してください。

保険料控除と保障を整理したい方へ

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