厚生労働省は2026年9月4日、「国民年金第3号被保険者制度等に関する検討会」の初会合を開きました。第3号被保険者制度の見直しを巡っては「廃止が決まった」「扶養の人も国民年金保険料を払う」といった情報が広がりやすいものの、現時点で具体的な制度変更や施行日は決まっていません。

結論

始まったのは、当事者の実態を調べ、今後の制度の在り方を検討するための会議です。第3号被保険者制度の廃止、保険料、給付、移行時期はいずれも未決定です。現在の加入者が、報道の見出しだけで働き方や家計計画を急に変える必要はありません。

2026年9月4日に何が始まった?

第1回検討会では、第3号被保険者制度を巡る現状と、今後実施する実態調査が議題になりました。厚生労働省は、有識者、労働者・使用者団体などで構成する検討会で、第3号被保険者制度と関連制度を検討します。

背景には、2025年成立の年金改正法の附則で、第3号被保険者の実情を調査し、その在り方を検討するとされたことがあります。また、政府の「経済財政運営と改革の基本方針2026」では、社会保障改革項目について2026年度中に具体的な制度設計を行う方針が示されています。

注意

「制度設計を検討する」という方針と、「廃止内容・施行日が決まった」という事実は別です。今後の調査結果、検討会の議論、法案提出、国会審議などを経なければ、具体的な変更内容は確定しません。

そもそも第3号被保険者とは

国民年金の第3号被保険者は、原則として次の条件を満たす人です。制度上は男女共通であり、夫も第3号被保険者になり得ます。

  • 20歳以上60歳未満
  • 厚生年金に加入する第2号被保険者の配偶者
  • 日本国内に住所がある
  • 配偶者の収入で生計を維持している
  • 原則として年間収入が130万円未満

第3号被保険者は国民年金保険料を個別に納めませんが、その期間は保険料納付済期間として老齢基礎年金に反映されます。第3号被保険者分を含む基礎年金の費用は、第2号被保険者全体が負担する厚生年金保険料から賄われています。

2026年4月からは、労働条件通知書などに記載された賃金から見込まれる年間収入が130万円未満で、他の収入が見込まれない場合などに、原則として被扶養者と認定する取扱いが始まっています。

なぜ見直しが議論されている?

第3号被保険者制度は1986年に始まりました。当時は、会社員の夫と専業主婦の妻という世帯を念頭に、配偶者自身の年金権を確保する役割がありました。

その後、共働き世帯や短時間労働者が増え、家族や働き方が多様化しました。厚生労働省の検討資料では、主に次の観点が論点として示されています。

  • 働き方に中立な制度にできるか
  • 単身者、共働き世帯、自営業者との負担のバランス
  • 育児、介護、健康上の事情で働けない人への所得保障
  • 保険料負担と将来の年金給付をどう設計するか
  • 健康保険の扶養や配偶者手当など関連制度への影響

制度を見直すべきだという意見がある一方、育児・介護などで働けない人を支える機能を重視する意見もあります。検討会は、どちらか一方の前提に立って結論を出した段階ではありません。

実態調査で何を調べる?

厚生労働省は、第3号被保険者の世帯状況、就業状況、扶養内にとどまる理由、育児・介護・健康上の制約、制度への評価などを調べる予定です。Webアンケートに加え、第3号被保険者を中心とする約70人へのヒアリングも実施し、2026年度中に結果を取りまとめるとしています。

検討資料によると、第3号被保険者の5割以上は就労しており、雇用者として働く人の8割以上は「パート」です。一方、就労していない人の中には、出産・育児、介護・看護、健康上の理由ですぐ働けない人もいます。

「扶養内で働く人」と一括りにせず、働く時間を増やせる人と、家庭事情などで増やせない人を分けて把握することが、制度設計の前提になります。

106万円の壁・130万円の壁との関係

第3号被保険者制度の議論と、「106万円の壁」「130万円の壁」は関連しますが、同じ制度ではありません。

項目 意味 現時点の状況
106万円の壁 短時間労働者が勤務先の社会保険に加入する賃金要件の通称 2026年10月に月額8.8万円要件の撤廃予定
130万円の壁 健康保険の被扶養者や第3号被保険者の収入基準 現行の基準は継続
第3号被保険者制度 扶養される配偶者の国民年金上の区分 検討会が始まった段階

2026年10月以降、勤務先で社会保険の加入要件を満たした人は、年収130万円未満でも自分の勤務先で健康保険・厚生年金に加入します。詳しくは2026年10月「106万円の壁」撤廃の記事で整理しています。

今、確認しておきたい5項目

  1. 自分の年金区分:第1号・第2号・第3号のどれか
  2. 雇用契約:週の所定労働時間、賃金、雇用期間
  3. 勤務先の社会保険:加入対象となる企業規模や条件
  4. 配偶者の勤務先制度:家族手当・配偶者手当の収入条件
  5. 加入後の家計:保険料負担だけでなく、厚生年金や傷病手当金など増える保障

FPポイント

「扶養を外れると損か」だけで判断すると、働ける時間、将来の厚生年金、病気で休んだときの保障を見落とします。制度変更が決まる前から収入を抑えるのではなく、現在のルールで手取りと保障を計算し、確定情報が出た時点で再確認するのが安全です。

最低賃金の上昇で同じ勤務時間でも年収が増える人は、2026年度最低賃金と扶養への影響も確認してください。勤務先の社会保険へ加入した場合は、傷病手当金など、公的保障の内容も変わります。

よくある質問

第3号被保険者制度の廃止は決まりましたか?

決まっていません。2026年9月4日に検討会が始まり、実態調査と制度の在り方の検討を進める段階です。

第3号被保険者はすぐ国民年金保険料を払うことになりますか?

現時点で、新たな保険料負担や金額、開始日は決まっていません。現行制度が直ちに変わるわけではありません。

第3号被保険者は女性だけの制度ですか?

制度は男女共通です。厚生年金に加入する配偶者に扶養され、年齢・収入などの要件を満たす男性も対象になり得ます。

130万円未満なら必ず第3号のままですか?

必ずではありません。勤務先の社会保険加入要件を満たす場合は、年収130万円未満でも第2号被保険者になります。配偶者との生計維持関係など、ほかの条件もあります。

まとめ

厚生労働省は2026年9月4日、第3号被保険者制度等に関する検討会を開始しました。しかし、制度の廃止、保険料負担、施行日は決まっていません。

今後は2026年度中にまとめられる実態調査と検討会資料を確認し、法案など具体的な内容が示された段階で家計への影響を計算する必要があります。現段階では、見出しだけで判断せず、自分の年金区分、雇用契約、勤務先の社会保険条件を確認しておきましょう。

参考にした公的情報

本記事は2026年9月6日時点の公表情報に基づきます。今後の議論によって制度案が変わる可能性があります。働き方や手続きは、勤務先、加入する健康保険、日本年金機構などへ確認してください。

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