消費者庁は2026年9月10日、「デジタル取引・特定商取引法等検討会 中間取りまとめ」を公表しました。SNSのダイレクトメッセージや事業者とのチャットで不意に勧誘される取引について、電話勧誘販売に近い規制を設け、一定の場合に8日間のクーリングオフを可能にする方向性が示されています。
同時に、解約を不当に難しくする画面設計、支払総額や契約期間を分かりにくくする表示、注文後に契約内容を変更させる仕組みなどへの規制強化も提言されました。
9月10日に何が公表された?
消費者庁の検討会は、インターネット取引の広がりに対し、現在の特定商取引法だけでは対応しにくい場面を整理しました。中間取りまとめの主な対象は、SNS・チャットによる勧誘、消費者の判断を誘導する表示、契約内容の確認、解約妨害、デジタルプラットフォーム上の取引などです。
資料では「規律を設けるべき」「対象とすることが考えられる」といった表現が使われています。これは制度設計の方向性を示すもので、法律の条文や施行日が確定したという意味ではありません。
SNS・チャット勧誘のクーリングオフ案
中間取りまとめは、スマートフォンやパソコンの画面を通じて、特定の相手と双方向に文字情報などをやり取りするものを「チャット等」と整理しています。ダイレクトメッセージだけでなく、やり取りの中で送られる画像・動画・音声メッセージ、リンクなども想定されています。
規制対象として検討されるのは、事業者側からチャットで勧誘を始める場合や、勧誘目的を隠したり著しく有利な条件を示したりして消費者からチャットを開始させ、その中で契約へ誘導する場合です。こうした不意打ち性の高い勧誘には、勧誘目的の明示、不実告知や重要事実の不告知の禁止、威迫・困惑行為への規制を設ける方向が示されました。
さらに、電話勧誘販売や訪問販売を参考に、書面を受領した日から8日が経過するまでクーリングオフを可能とすべきだとしています。
ただし、一斉配信や一方向のポップアップ表示が、それだけで直ちにチャット勧誘規制の対象になるという整理ではありません。既存契約の管理に必要な通常連絡などをどう扱うかも、今後の制度設計で明確にする必要があります。
定期購入やネット通販で検討される4つの変更
1.分かりにくい表示・画面設計への規制
支払総額、違約金、購入数量、契約期間を正確かつ容易に確認できない表示や、虚偽の在庫情報・タイムセール表示などが問題として挙げられています。何度も操作を求めたり、不安をあおる文言を表示したりして申込みを迫る手法も規制対象とする方向です。
2.注文後の契約内容を電子書面で交付
注文が完了した後、契約内容を記載した電子書面などを、電子メール等で遅滞なく交付する義務を設ける案です。注文確定後に別の契約を提案する場合は、変更前と変更後を対照できるようにすることも提言されています。
3.解約を過度に難しくする行為への対応
契約は数回のタップでできるのに、解約は電話だけで、しかもつながらない。何画面も移動させられ、途中で思いとどまるよう繰り返し誘導される。このように、合理的な理由なく解約手続きを過度に複雑にしたり、不当に遅らせたりする行為を規制すべきだとしています。
4.広告であることの分かりやすい表示
実際には広告なのに、一般の投稿や中立的な情報のように見える表示への対応も盛り込まれました。具体的な規制方法は、事業活動への影響などを踏まえて引き続き検討するとされています。
現行ルールでは通販にクーリングオフはある?
一般的な通信販売には、訪問販売や電話勧誘販売と同じクーリングオフ制度はありません。消費者庁は、通販では注文前に返品特約を確認するよう案内しています。
ただし、広告に返品についての特約がない場合には、商品を受け取った日から8日以内であれば申込みの撤回や契約解除ができ、返送費用は原則として消費者負担になります。返品不可などの特約が分かりやすく表示されている場合は、その内容が優先されるのが原則です。
また、現在の特定商取引法でも、通販の最終確認画面では数量、支払総額、支払時期・方法、引渡時期、返品・解約条件、申込期限などを簡単に確認できるよう表示する必要があります。表示がなかったり、誤認させる表示によって申し込んだりした場合は、契約を取り消せる可能性があります。
オンラインの契約でも、事業者から送られたURLで参加したウェブ会議やSNSの通話機能で勧誘された場合など、現行法上の「電話勧誘販売」に当たり、クーリングオフできることがあります。文字のチャット、音声通話、自分で検索して注文した通販を一律に同じ扱いだと決めつけないことが重要です。
読者が今しておきたい5つの対策
- 契約前に総額と回数を確認する:初回価格だけでなく、2回目以降の金額、最低購入回数、送料、解約期限まで確認する
- 最終確認画面を保存する:注文確定ボタンを押す前に、画面全体をスクリーンショットで残す
- チャット履歴を消さない:相手の名称、勧誘目的、説明内容、日時、送られたURLが分かる状態で保存する
- 解約を申し出た記録を残す:メール、フォーム送信画面、通話日時などを控え、相手からの返信も保管する
- 困ったら早めに相談する:相手と話がつかない場合は、消費者ホットライン「188」で最寄りの消費生活センター等につないでもらう
定期購入やサブスクリプションは、1件ごとの金額が小さくても、複数重なると家計の固定費になります。毎月の支出と特別費を分けて管理する方法は「手取り収入を4分割する意味と方法」も参考にしてください。
FPの視点:制度改正を待たず、契約の入口を整える
新しい規制が実現すれば、消費者が不意打ちの勧誘や不合理な解約手続きから離れやすくなる可能性があります。一方、法改正までの間も、すべての通信販売契約を後から無条件で取り消せるわけではありません。
家計を守る実務的な順番は、契約前に「総支払額」「継続期間」「解約方法」の3点を確認し、確認画面と勧誘記録を残すことです。価格だけでなく、やめたいときにやめられるかを契約コストの一部として考えましょう。
よくある質問
チャットで契約したら、今すぐ8日間のクーリングオフができますか?
一律にはできません。今回の中間取りまとめは将来の法改正に向けた提言であり、新制度はまだ施行されていません。現在の取引類型が訪問販売や電話勧誘販売などに該当するか、個別に確認する必要があります。
通販の返品特約が見当たりません。返品できますか?
広告に返品特約がない場合は、商品を受け取った日から8日以内であれば返品できる制度があります。返送費用は原則として消費者負担です。商品の不具合や契約内容との不一致がある場合は、自己都合返品とは別の問題になるため、状況を整理して相談してください。
定期購入の解約電話がつながりません。どうすればよいですか?
電話した日時や回数を記録し、メールや問い合わせフォームなど他の連絡手段があれば利用して証拠を残しましょう。請求を放置したり自己判断で受取拒否だけをしたりせず、早めに消費者ホットライン188へ相談してください。
新しいルールはいつから始まりますか?
2026年9月10日時点で施行日は決まっていません。今後、法案化や国会審議などを経る可能性があります。具体的な対象取引、例外、施行時期は消費者庁の正式発表を確認しましょう。
まとめ
消費者庁の中間取りまとめは、SNS・チャットによる不意打ちの勧誘に8日間のクーリングオフを設ける方向性や、分かりにくい契約画面、解約妨害への規制強化を示しました。
ただし、現時点では提言段階で、新制度はまだ利用できません。通販の契約前には総額、契約期間、解約条件を確認し、最終確認画面とチャット履歴を保存してください。トラブルが起きた場合は、一人で判断せず消費生活センター等に早めに相談しましょう。
